骨盤の前傾・後傾、側方傾斜、回旋、側方移動、前方移動等、これらを3Dで評価するのは、なかなか難解ですよね。
今回は前傾・後傾に絞り、そうなる要因と、それにより起こることを動画と文章で考察してみました。
前傾・後傾の要因
(前傾)
①特定の筋肉が弱くなり、前傾が強くなるパターン。
解剖学的に、骨盤は前傾して、腰椎は前弯し前方への剪断力がかかっている。
→腹筋群や大殿筋(剪断力に対抗)が弱くなり、剪断力を支えられず、腰椎前弯増強、骨盤前傾をおこす。
②特定の筋肉の使い過ぎにより、前傾が強くなるパターン。
骨盤前傾・腰椎前弯を強くする筋肉を使い過ぎて、緊張・短縮し、腰椎前弯増強、骨盤前傾をおこす。
→腰部脊柱起立筋群、多裂筋、大腿直筋、腸腰筋、恥骨筋、大腿筋膜張筋、殿筋上部・前部等。
③不良姿勢により前傾が強くなるパターン。
・不良姿勢・不良アライメントなどで骨盤前傾、腰椎前弯を強くする筋肉が短縮を強いられ腰椎前弯増強、骨盤前傾をおこす。
(例)
座位時の不良姿勢により前傾がより強くなる(立位で前傾の人の場合)。
座位時に、骨盤後傾座りをすることで、大殿筋(中〜下部)は弱化。
元々短縮している大腿直筋、大腿筋膜張筋は伸張されて収縮するので、さらに緊張し結果短縮してしまい立位では、前傾を増長してしまう。
※立位で前傾の人の場合は前傾をより強くし、立位で後傾の人の場合はより後傾に。
(後傾)
①加齢等で、骨・骨格の変性や筋力低下で腹圧の低下が起こり後傾が強くなるパターン。
骨・骨格の変性、コアスタビリティの破綻→腹圧低下→腰椎の生理前弯が維持出来なくなり、胸腰筋膜にもたれかかる代償運動→骨盤後傾。
後傾になると大殿筋は使われなくなる。膝は屈曲し、ハムストリングスは短縮、より後傾を躍起する。
※コアスタビリティ(体幹の安定)筋
横隔膜・腹横筋・多裂筋・骨盤底筋
②座位時の不良姿勢と長時間の座位によるパターン。
座位時に、骨盤後傾座りをすることで、大殿筋は弱化。
後傾になると大殿筋は使われなくなる。座位で膝は屈曲位が続き、ハムストリングスは短縮、より後傾を躍起する。
さらに、スマホやPC使用時の頭部前方姿勢は、胸腰筋膜にもたれかかるので、さらに後傾を躍起させる。
「前傾・後傾姿勢でおこること」
◯前傾
・後傾のように、ランドマークが矢状面で大きくは逸脱しにくい。
※矢状面(横から見た姿勢)のランドマーク
・耳垂・肩峰・大転子・膝関節前部・外果の前方
5つのランドマークが一直線上の並び。
・腰椎前弯増強。
・膝はやや伸展位。
・股関節は屈曲位の状態となる。
・椎間関節や棘突起、椎骨の後部に負担。
・運動連鎖では、前傾により下肢全体は内旋方向に向かい、腰椎は前弯する。
・骨盤の臼蓋は半球状をしており、前面は浅く、後面は深い構造をしているため、骨盤が前傾で接合面は大きくなり骨盤後傾で接合面は小さくなる。
「短縮(一時的筋緊張)」
脊柱起立筋群、股関節屈筋群(腸腰筋、大腿直筋、大腿筋膜張筋、恥骨筋)、臀筋上部・前部頸部伸筋
※大腿は前面、体幹は後面+腸骨筋。
「伸張、弱化」
大臀筋(中〜下部)、ハムストリングス(弱化は軽度)、腹筋群 。
「二時的筋緊張(伸張性収縮)」
ランドマークが大きくは逸脱していない為、あまりおこりえなそうだが、ハムストリングや臀筋上部は伸張位なので、スポーツでは効率良く働けるともいえる。
「施術、セルフケア」
一時的筋緊張の緩和と腹筋群強化がポイント。
脊柱起立筋群、股関節屈筋群のストレッチ。
腹筋群(下部)、大臀筋(中〜下部)の強化。腹式呼吸。大股歩行(大臀筋)
骨盤後傾運動
座位時の後傾の改善 ・骨盤を立てる。
◯後傾
・筋の保持があまりみられない弛緩姿勢(筋弱化)。
・腰椎前弯減少消失。
・膝が屈曲位。
・股関節は伸展位の状態となる。
・骨盤前方移動も起こりやすい。
・椎間板に負担。
・運動連鎖では、後傾により下肢全体は外旋方向に向かい、腰椎は前弯消失していく。
・足で後方重心の可能性も。
「短縮(結果短縮)、筋緊張」
ハムストリングス(一時的筋緊張というより、骨盤後傾位による短縮された状態によるもの。膝屈曲位なので、膝窩部に負担)
腹部、大胸筋、胸鎖乳突筋、大臀筋
「短縮かつ弱化」
大臀筋
大腿骨が伸展位にあるので、歩行時に伸展出来ない。
→すでに伸展位の為、それ以上動かせない。
→伸展の運動刺激が入らないので、臀筋の筋力低下を起こす。硬くもなる。
ハムストリングス
※大腿は後面、体幹は前面。
※緊張により、後傾するし、後傾により使われなくなり短縮するともいえる。
「伸張、弱化」
股関節屈筋群(腸腰筋、大腿直筋、大腿筋膜張筋)は伸張され硬くなる。外腹斜筋。
ハムストリングス優位の為、股伸展の大臀筋と膝伸展の大腿直筋の活動が減少して筋力が低下する。
「二時的筋緊張(伸張性収縮)」
大腿筋膜張筋、大腿直筋
それ以上、前方移動しないよう、後傾しないよう頑張る。
「施術、セルフケア」
・弱化した筋の強化と、後傾位による二時的筋緊張の緩和、前傾誘導運動(ヒップリフト等)がポイント。
ハムストリングスのストレッチ。大腿筋膜張筋の疲労回復。
大腿直筋、大臀筋の強化。
コアスタビリティ(体幹の安定)筋強化(横隔膜・腹横筋・多裂筋・骨盤底筋)
もも上げ歩行(腸腰筋)。
前傾誘導運動(座位ヒップリフト)。
(前傾・後傾ともに重要な筋)
・大腿筋膜張筋と腸腰筋
前傾なら一時的筋緊張、後傾なら二時的筋緊張(姿勢の影響によるふんばり筋)になりやすいので最重要。
・大臀筋 (中〜下部)
前傾は伸張され弱くなりやすい。後傾は短縮され弱くなりやすい。
(左右差がある場合の前傾ぎみ側[AS]、後傾ぎみ側[PI]の特徴)
「前傾ぎみ側[AS]」
①体幹背部、頸部後面が使われないので短縮緊張。下肢は大腿四頭筋が使われないので短縮緊張。
※大腿は前、体幹は後。+腸骨筋が短縮・緊張。
②背臥位で前傾側下肢は股関節が尾側へ移動することで、見かけ上長くなる。長座位では股関節が背側へ移動することで短くなる。
③腹臥位で大腿骨頭(大転子)の位置は、前傾側が尾側かつ背側になる。
④前傾側は筋肉で立つ。
「後傾ぎみ側[PI]」
①体幹前面、頸部前面が使われないので短縮緊張。下肢は後面使われないので短縮緊張。ハムストリングスと下腿三頭筋の癒着がおこりえる。
※大腿は後、体幹は前が緊張・短縮。
②背臥位で後傾側は下肢は股関節が頭側へ移動することで、見かけ上短くなる。長座位では股関節が腹側へ移動することで長くなる。
③腹臥位で大腿骨頭(大転子)の位置は、後傾側が頭側かつ腹側になる。
④後傾側は骨で立つ。脚が短い側(後傾側)に体重をかけやすい。
安定して体重を乗せやすい側(後傾側)に側方移動しやすく後傾側に回旋する。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。